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『国貞えがく』
青空文庫
人間ではあるまい。鳥か、獣か、それともやっぱり土蜘蛛の類かと、訪ねると、……その頃六十ばかりだった織次の祖母《おばあ》さんが、
「あれはの、二股坂の庄屋殿じゃ。」といった。
この二股坂と言うのは、山奥で、可怪《あやし》い伝説が少くない。それを越すと隣国への近路ながら、人界との境を隔つ、自然のお関所のように土地の人は思うのである。
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