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 『婦系図』 青空文庫

 目も放さず、早瀬がそれを凝《じっ》と視《なが》める内に、濁ったようなその灯影が、二三度ゆらゆらと動いて、やがて礫《つぶて》した波が、水の面《おも》に月輪を纏《まと》めた風情に、白やかな婦《おんな》の顔がそこを覗いた。
 門の扉《と》が開くでもなしに……続いて雪のような衣紋が出て、それと合《うつりあ》ってくッきりと黒い鬢が、やがて薄お納戸の肩のあたり、きらりと光って、帯の色の鮮麗《あざやか》になったのは――道子であった。

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