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『婦系図』 青空文庫
門の扉《と》が開くでもなしに……続いて雪のような衣紋が出て、それと映合《うつりあ》ってくッきりと黒い鬢が、やがて薄お納戸の肩のあたり、きらりと光って、帯の色の鮮麗《あざやか》になったのは――道子であった。
門に立忍んで、密《そ》と扉を開けて、横から様子を伺ったものである。
一目見ると、早瀬は、ずいと立って、格子を開けながら、手招ぎをする。と、立直って後姿になって、AB《アアベエ》横町の左右を〓《みまわ》す趣であったが、うしろ向きに入って、がらがらと後を閉めると、三足ばかりを小刻みに急いで来て、人目の関には一重も多く、遮るものが欲しそうに、また格子を立てた。
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