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 『婦系図』 青空文庫

「夢ではないのでしょうかしら。宙を歩行《ある》きますようで、ふらふらして、倒れそうでなりません。早瀬さん、お袖につかまらして下さいまし。」
「しっかりと! 可い塩梅に人通りもありませんから。」
 人は無くて、軒を走る、怪しき狗が見えたであろう。紺屋の暖簾の鯛の色は、燐火《おにび》となって燃えもせぬが、昔を知ればひづめの音して、馬の形も有りそうな、安東村へぞ着きにける。

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