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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 内《うち》は内で親たちが、厳しく叱言《こごと》も申します。気の強いのは、おのれ、凸助……いや、鼻ぴっしゃり、芋〓《ずいき》の葉の凹吉め、細道で引捉《ひッつか》まえて、張撲《はりなぐ》って懲そう、と通りものを待構えて、こう透かして見ますがの、背の高いのから順よく並んで、同一《おなじ》ような芋〓《ずいき》の葉を被っているけに、衣ものの縞柄も気の所為か、逢魔が時に茫として、庄屋様の白壁に映して見ても、どれが孫やら、倅やら、小女童《こめろ》やら分りませぬ。
 おなじように、憑物がして、に使われているようで、手もつけられず、親たちがうろうろしますの。村方一同寄ると障《さわ》ると、立膝に腕組するやら、平胡座で頬杖つくやら、変じゃ、希有じゃ、何でもただ事であるまい、と薄気味を悪がります。

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