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『草迷宮』
鏡花とアンティークと古書の小径
床几の在処《ありか》も狭いから、今注いだので、引傾《ひっかたむ》いた、湯沸《ゆわかし》の口を吹出す湯気は、むらむらと、法師の胸に靡いたが、それさえ颯と涼しい風で、冷い霧のかかるような、法衣《ころも》の袖は葭簀を擦って、外の小松へ翻る。
爽な心持に、道中の里程を書いた、名古屋扇も開くに不及《およばず》、畳んだなり、肩をはずした振分けの小さな荷物の、
白
木綿の繋ぎめを、押遣って、
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