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 『婦系図』 青空文庫

 なお棚には、他に二つばかり処方の違った、今は用いぬ、同一《おなじ》薬瓶があった。その一個《ひとつ》を取って、ハタと叩きつけると、床に粉々になるのを見向きもしないで、躍上るように勢込んで寝台に上って、むずと高胡坐《たかあぐら》を組んだと思うと、廊下の方を屹と見て、
「馬鹿な奴等! 誰だと思う。」
 と言うと斉《ひと》しく、仰向けに寝て、毛布《けっと》を胸へ。――鶏《とり》の声を聞きながら、大胆不敵な鼾《いびき》で、すやすやと寝たのである。

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