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 『春昼後刻』 泉鏡花を読む

 二つばかり天窓を掉つたが、小さい方の背中を突いて、テンと又撥を当てる。
「可いよ、そんなことをしなくつても、」
 と裳をずりおろすやうにして止めた顔と、未だ掴んだまゝの大きな銀貨とを互ひに見較べ、二個ともとぼんとする。時に朱盆の口を開いて、眼を輝すものは何。

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