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 『五大力』 従吾所好

 肺病かと聞くと、いや、不思議な病気、身体が糸のやうに痩せて、額が抜上つて、頬がげつそり。そして、希有な事には、両方の目の球が、ぷく/\と膨れて、まつげぐるみ、瞼が赤く翻〈かへ〉つて、ぶらりと出る。……胸も腹も動悸はたゞ波を打つばかり、で、わな/\わな/\十本の指がひとりでに震へる。」
 と小弥太の指もぶる/\と震へる。
 車夫が、食ひかけた茶飯を手に据ゑ、茶碗に素直〈まつすぐ〉に箸を握つて、うつかりと成つたのが、蓮の飯〈いひ〉のやうに見えた。

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