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 『春昼』 泉鏡花を読む

 通り縋ると、どうしたのか、我を忘れたやうに、私は、あの、低い欄干へ、腰をかけて了つたんです。抜けたのだなぞと言つては不可ません。下は川ですから、あれだけの流でも、落ちようもんなら其切です――淵や瀬でないだけに、救助船とも喚かれず、又叫んだ処で、人は串戯だと思つて、笑つて見殺しにするでせう、泳を知らないから、)
 と言つて、苦笑をしなさつたつけ……それが真実になつたでございます。
 何うしたことか、此の恋煩に限つては、傍のものは、あは/\、笑つて見殺しにいたします。

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