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 『婦系図』 青空文庫

 お妙の次を道子が乗った。ドン尻に、め組の惣助、婦《おんな》ばかりの一群《ひとむれ》には花籠に熊蜂めくが、此奴《こいつ》大切なお嬢の傍《かたえ》を、決して離れる事ではない。
 これは蓋し一門の大統領、従五位勲三等河野英臣の発議に因て、景色の見物をかねて、久能山の頂で日蝕の観測をしようとする催《もよおし》で。この人達には花見にも月見にも変りはないが、驚いて差覗いた百姓だちの目には、天宮に蝕の変あって、天人たちが遁げるのだと思ったろう。

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