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 『国貞えがく』 青空文庫

 汽車が通じてから、はじめて帰ったので、停車場《ステエション》を出た所の、故郷《ふるさと》は、と一目見ると、石を置いた屋根より、赤く塗った柱より、先ずその山を見て、暫時《しばらく》茫然として彳んだのは、つい二、三日前の事であった。
 腕車《くるま》を雇って、さして行く従姉の町より、真先に、
 「あの山は?」

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