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『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径
厭な事でござります。黒門へ着かしって、産所へ据えよう、としますとの、それ、出養生の嬢様の、お産の床と同一《おんなじ》じゃ。(ああ、青い顱巻《はちまき》をした方が、寝てでござんす、些と傍へ)と……まあ、難産の嫁御がそう言わしっけ。
其奴に、負けるな、押潰《おッつぶ》せ、と構わず褥を据えましたが、夜露を受けたが悪かったか、もうお医者でも間に合わず。
(あなたも。……口惜《くやし》い、)と恍惚《うっとり》して、枕に犇と喰つかしって、うむというが最期で、の、身二ツになりはならしったが、産声も聞えず、両方ともそれなりけり。
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