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 『春昼』 泉鏡花を読む

(やあ、)と言つて、十二三の一番上の児が、駈けて返つて、橋の上へ落して行つた白い手巾を拾つたのを、懐中へ突込んで、黙つて又飛んで行つたさうで。小児だから、辞儀も挨拶もないでございます。
 御新姐が、礼心でだけ振向いて、肩へ、頤をつけるやうに、唇を少し曲げて、其の涼い目で、熟と此方を見返つたのが取違へたものらしい、私が許の客人と、ぴつたり出会つたでありませう。

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