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 『春昼』 泉鏡花を読む

 御新姐が、礼心で顔だけ振向いて、肩へ、頤をつけるやうに、唇を少し曲げて、其の涼い目で、熟と此方を見返つたのが取違へたものらしい、私が許の客人と、ぴつたり出会つたでありませう。
 引込まれて、はツと礼を返したが、其ツ切。御新姐の方は見られなくつて、傍を向くと貴下、一厘土器が怪訝な色。
 いや最う、しつとり冷汗を掻いたと言ふ事、――こりや成程。極がよくない。

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