検索結果詳細


 『婦系図』 青空文庫

 掏摸の指で突《つつ》いても、倒れるような石垣や、蟻で崩れる濛《ほり》を穿《ほ》って、河野の旗を立てていたって、はじまらねえ話じゃねえか。
 お前さん、さぞ口惜《くやし》かろう。打《ぶ》ちたくば打て、殺したくば殺しねえ、義理を知ってぬような道理を知った己じゃねえが、嬢さんに上げた生命《いのち》だから、その生命を棄てるので、お道さんや、お菅さんにも、言訳をするつもりだ。んでも寂《さびし》い事はねえ、女房が先へ行って待っていら。

 3934/3954 3935/3954 3936/3954


  [Index]