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 『婦系図』 青空文庫

 お前さん、さぞ口惜《くやし》かろう。打《ぶ》ちたくば打て、殺したくば殺しねえ、義理を知って死ぬような道理を知った己じゃねえが、嬢さんに上げた生命《いのち》だから、その生命を棄てるので、お道さんや、お菅さんにも、言訳をするつもりだ。死んでも寂《さびし》い事はねえ、女房が先へ行って待っていら。
 お蔦と二人が、毒になって、可愛いお妙さんを守護する覚悟よ。見ろ、あの竜宮に在る珠は、悪竜が絡《まと》い繞《めぐ》って、その器に非ずして濫《みだ》りに近づく者があると、呪殺すと云うじゃないか。

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