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 『婦系図』 青空文庫

 お蔦と二人が、毒蛇になって、可愛いお妙さんを守護する覚悟よ。見ろ、あの竜宮に在る珠は、悪竜が絡《まと》い繞《めぐ》って、その器に非ずして濫《みだ》りに近づく者があると、呪殺すと云うじゃないか。
 呪詛《のろ》われたんだ、呪詛われたんだ。お妙さんに指を差して、お前たちは呪詛われたんだ。」
 と膝に手を置き、片面《はんおもて》を、怪しきものの走るがごとく颯《さ》と暗くなった海に向けて、蝕ある凄《すご》き日の光に、水底《みなそこ》のその悪竜の影に憧るる面色《おももち》した時、隼の力の容貌は、かえって哲学者のごときものであった。

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