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『高野聖』
泉鏡花を読む
(何でも人間を乗つけられさうな馬ぢやあござらぬ。御坊様は命拾ひをなされたのぢやで、大人しうして嬢様の袖の中で、今夜は助けて貰はつしやい、然様ならちよつくら行つて参りますよ。)
(あい。)
(畜生。)といつたが馬は出ないわ。びく/\と蠢いて見える大な鼻面を此方へ捻ぢ向けて頻に私等が居る方を見る様子。
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