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 『春昼』 泉鏡花を読む

 御本人、然うとも口へ出して言はれませなんだが、それから何んとなく鬱ぎ込むのが、傍目にも見えたであります。
 四五日、引篭つてござつたほどで。
 後に、何も彼も打明けて私に言ひなさつた時の話では、しかし又其の間違が縁になつて、今度出会つた時は、何んとなく両方で挨拶でもするやうになりはせまいか。然うすれば、どんなにか嬉しからう、本望ぢや、と思はれたさうな。迷ひと申すはおそろしい、情ないものでござる。世間大概の馬鹿も、これほどなことはないでございます。

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