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 『親子そば三人客』 従吾所好

       一
「花まきを一つ、」と誂えて、縞の羽織の片手を懐に、右手〈めて〉で焼落しの、最う灰になつた大火鉢をぐい、と引寄せながら、帳場格子を後にして整然〈ちゃん〉と坐つた、角帯に金鎖を見せた客があつた。彼是十二時に近い頃、雨上りの春寒い晩である。

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