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 『雛がたり』 青空文庫

 遠くで、内井戸の水の音が水底《みなそこ》へ響いてポタン、と鳴る。不思議に風が留《や》んで寂寞《ひっそり》した。
 見上げた破風口《はふぐち》は峠ほど高し、とぼんと野原へ出たような気がして、縁《えん》に添いつつ中土間を、囲炉裡《いろり》の前を向うへ通ると、桃桜《ももさくら》溌《ぱっ》と輝くばかり、五壇《ごだん》一面の緋毛氈、やがて四畳半を充満《いっぱい》に雛、人形の数々。

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