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 『雛がたり』 青空文庫

 見上げた破風口《はふぐち》は峠ほど高し、とぼんと野原へ出たような気がして、縁《えん》に添いつつ中土間を、囲炉裡《いろり》の前を向うへ通ると、桃桜《ももさくら》溌《ぱっ》と輝くばかり、五壇《ごだん》一面の緋毛氈、やがて四畳半を充満《いっぱい》に雛、人形の数々。
 ふとその飾った形も姿も、昔の故郷の雛によく肖《に》た、と思うと、どの顔も、それよりは蒼くて、衣《きぬ》も冠《かむり》も古雛《ふるびな》の、丈が二倍ほど大きかった。

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