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 『縁結び』 青空文庫

 とじっと見詰《みつ》めると、恍惚《うっとり》した雪のようなお君の顔の、美しく優しい眉《まゆ》のあたりを、ちらちらと蝶《ちょう》のように、紫の影が行交《ゆきか》うと思うと、菫《すみれ》の薫《かおり》がはっとして、やがて縋《すが》った手に力が入った。
 お君の寂しく莞爾《にっこり》した時、寂寞《じゃくまく》とした位牌堂の中で、カタリと音。
 目を上げて見ると、見渡す限り、山はその戸帳《とばり》のような色になった。が、やや艶《つや》やかに見えたのは雨が晴れた薄月の影である。

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