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 『歌行燈』 従吾所好

 着換へに紋付の一枚も持つた、縞で襲衣〈かさね〉の若旦那さ。……ま、恁う、雲助が傾城買の昔を語る……負惜みを言ふのぢやないよ。何も自分の働きで然うした訳ぢやないのだから。――聞きねえ、親なり、叔父なり、師匠なり、恩人なりと言ふ、……私が稼業ぢや江戸で一番、日本中の家元の大黒柱と云ふ、少兀〈はげ〉の苦い面した阿父〈おやぢ〉がある。

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