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 『春昼後刻』 泉鏡花を読む

 唯其有耶無耶であるために、男のあとを追ひもならず、生長らへる効もないので。 そゞろに門附を怪しんで、冥土の使のやうに感じた如きは幾分か心が乱れて居る。意気張づくで死んで見せように到つては、益々悩乱のほどが思ひ遣られる。
 又一面から見れば、門附が談話の中に、神田辺の店で、江戸紫の夜あけがた、小僧が門を掃いて居る、納豆の声がした……のは、其の人が生涯の東雲頃であつたかも知れぬ。――やがて暴風雨となつたが――

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