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『春昼後刻』 泉鏡花を読む
男は真先に世間外に、はた世間のあるのを知つて、空想をして実現せしむがために、身を以つて直ちに幽冥に趣いたもののやうであるが、婦人は未だ半信半疑で居るのは、それとなく胸中の鬱悶を漏らした、未来があるものと定り、霊魂の行末が極つたら、直ぐにあとを追はうと言つた、言の端にも顕れて居た。
唯其有耶無耶であるために、男のあとを追ひもならず、生長らへる効もないので。 そゞろに門附を怪しんで、冥土の使のやうに感じた如きは幾分か心が乱れて居る。意気張づくで死んで見せように到つては、益々悩乱のほどが思ひ遣られる。
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