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 『春昼』 泉鏡花を読む

 此が、不思議に客人の気を悪くして、入相の浪も物凄くなりかけた折からなり、彼の、鬼青鬼なるものが、かよわい人を冥土へ引立てて行くやうで、思ひなしか、引挟まれた御新姐は、何んとなく物寂しい、快からぬ、滅入つた容子に見えて、ものあはれに、命がけにでも其奴等の中から救つて遣りたい感じが起つた。家庭の様子も略々知れたやうで、気が揉める、と言はれたのでありますが、貴下、これは無理ぢやて。

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