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『天守物語』
泉鏡花を読む
夫人の背《せな》より其の袖に縋《すが》る。縋る、と見えて、身体《からだ》その母衣《ほろ》の裾なる方にかくる。獅子頭を捧げつゝ、夫人の面、尚ほ母衣《ほろ》の外に見ゆ。
討手どや/\と入込み、唯《と》見てわつと一度退く時、夫人も
母
衣《ほろ》に隠る。唯一頭青面《せいめん》の獅子猛然として舞台にあり。
討手、小田原修理、山隅九平、其の他。抜身の槍、刀。中には仰山に小具足をつけたるもあり。大勢。
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