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『婦系図』
青空文庫
いつもの向顱巻《むこうはちまき》が、四五日陽気がほかほかするので、ひしゃげ帽子を蓮の葉かぶり、ちっとも涼しそうには見えぬ。例によって飲《き》こしめした、朝から赤ら顔の、とろんとした目で、お蔦がそこに居るのを見て、
「おいでなさい、奥様《おくさん》、へへへへへ。」
「お止《よ》しってば、気障《きざ》じゃないか。お源もまた、」
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