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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 実は此処に来しなであった。秋谷明神という、その森の中の石段の下を通って、日向の麦畠へ差懸ると、この辺には余り見懸けぬ、十八、九の色白な娘が一人、めりんす友染の襷懸け、手拭を冠って畑に出ている。
 歩行《ある》きながら振返って、何か、此処らにおもしろい事もないか、と徒口《むだぐち》半分、檜笠の下から頤を出して尋ねるとね。
 はい、浪打際に子産石というのがござんす。これこれで此処の名所、と土地《ところ》自慢も、優しく教えて、石段から真直ぐに、畑中を切って出て見なさんせ、と指さしをしてくれました。

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