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 『春昼後刻』 泉鏡花を読む

 二人は此処でも後になり先になり、脚絆の足を入れ違ひに、頭を組んで白浪を被ぐばかり浪打際を歩行いたが、やがて其の大きい方は、五六尺渚を放れて、日影の如く散乱れた、かじめの中へ、草鞋を突出して休んだ。
 小獅子は一層活発に、衝と浪を追ふ、颯と追はれる。其光景、ひとへに人の児の戯れるやうには見えず、嘗て孤児院の児が此処に来て、一種の監督の下に、遊んだのを見たが、それとひとつで、浮世の浪に揉み立てられるかといぢらしい。但其の頭の獅子が怒り狂つて、たけり戦ふ勢である。

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