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『義血侠血』
青空文庫
七、八町を競争して、幸いに別条なく、馬車は辛くも人力車を追い抽きぬ。乗り合いは思わず手を拍ちて、車も憾《うご》くばかりに喝采せり。奴は凱歌《かちどき》の喇叭を吹き鳴らして、後《おく》れたる人力車を麾《さしまね》きつつ、踏み段の上に躍れり。ひとり御者のみは喜ぶ気色もなく、意《こころ》を注ぎて馬を労《いたわ》り駈けさせたり。
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