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『五大力』 従吾所好
「死神が憑いたぞ、此は。……いまの白いのを、流れた面だなんぞと思つて、うつかり慌て踏出さうものなら、すぐに、頭の上まで沈む、……傘をさした先刻〈さつき〉のが裳〈すそ〉を倒にして緋縮緬で立つて居るんだ……と急に手足ごと震へました。
枯蘆も疎らに揺れる。
ト眉を撫でて、スツと鼻のさきを掠めるやうに、一角〈ウニコオル〉の牙かと思ふ、大な船の尖つた舳先が、つい其処へ、霧を綻ばして、すらりと出たんです。
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