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 『活人形』 鏡花とアンティークと古書の小径

 泰助は旅店に帰りて、晩餐の前に湯に行きつ。湯殿に懸けたる姿見に、不図《ふと》我顔《わがかほ》の映るを見れば、頬の三日月露れ居たるにぞ、心潜《ひそ》かに驚かれぬ。ざつと流して座敷に帰り、手早く旅行鞄を開きて、小瓶の中より絵具を取出し、好く顔に彩《いろど》りて、懐中鏡に映し見れば、我ながら其巧妙《たくみ》なるに感ずるばかり旨々《まんま》と一皮被りたり。

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