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 『春昼』 泉鏡花を読む

 しかし、気をつけて見ると、あれでもしをらしいもので、路端などを我は顔で伸してる処を、人が参つて、熟と視めて御覧なさい。見返しますがな、極りが悪さうに鎌首を垂れて、向うむきに羞含みますよ。憎くないもので、はゝゝはゝ、矢張心がありますよ。」
「心があらはれては尚困るぢやありませんか。」
「否、塩気を嫌ふと見えまして、其の池のまはりには些とも居りません。邸には此頃ぢや、其の魅するやうな御新姐も留主なり、穴はすか/\と真黒に、足許に蜂の巣になつて居りましても、蟹の住居、落ちるやうな憂慮もありません。」

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