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『天守物語』
泉鏡花を読む
工人、近江之丞桃六《あふみのじようたうろく》、六十《むそ》ぢばかりの柔和《にうわ》なる老人。頭巾、裁着《たツつけ》、火打袋を腰に、扇を使うて顕《あらは》る。
桃六
美
しい人たち泣くな。(つか/\と寄つて獅子の頭を撫で)先づ、目をあけて進ぜよう。
火打袋より一挺の鑿を抜き、双の獅子の眼に当つ。
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