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 『春昼』 泉鏡花を読む

 尤も一方は、そんな風に――よし、村のものの目からは青鬼鬼でも――蝶の飛ぶのも帆艇の帆かと見ゆるばかり、海水浴に開けて居るが、右の方は昔ながらの山の形、真黒に、大鷲の翼打襲ねたる趣して、左右から苗代田に取詰むる峰の褄、一重は一重毎に迫つて次第に狭く、奥の方暗く行詰つたあたり、打つけなりの茅屋の窓は、山が開いた眼に似て、恰も大なる蟇の、明け行く海から掻窘んで、谷間に潜む風情である。

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