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『高野聖』
泉鏡花を読む
此人も生れ落ちると此山で育つたので、何にも存じません代り、気の可い人で些ともお心置はないのでござんす。
それでも風俗のかはつた方が被入しやいますと、大事にしてお辞儀をすることだけは知つてで
ござ
いますが、未だ御挨拶をいたしませんね。此頃は体がだるいと見えてお惰けさんになんなすつたよ。否、宛で愚かなのでは
ござ
いません、何でもちやんと心得て居ります。
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