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『春昼』 泉鏡花を読む
用なしの身体ゆゑ、客人が其処へ寄つて、路傍に立つて、両方とも矢鱈に飛車角の取替へこ、ころり/\差違へる毎に、ほい、ほい、と言ふ勇ましい掛声で。おまけに一人の親仁なぞは、媽々衆が行水の間、引渡されたものと見えて、小児を一人胡坐の上へ抱いて、雁首を俯向けに銜へ煙管。
で銜へたまんま、待てよ、どつこい、と言ふ毎に、煙管が打附りさうになるので、抱かれた児は、親仁より、余計に額に皺を寄せて、雁首を狙つて取らうとする。火は附いて居ないから、火傷はさせぬが、夢中で取られまいと振動かす、小児は手を出す、飛車を遁げる。
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