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 『春昼』 泉鏡花を読む

 で銜へたまんま、待てよ、どつこい、と言ふ毎に、煙管が打附りさうになるので、抱かれた児は、親仁より、余計に額に皺を寄せて、雁首を狙つて取らうとする。火は附いて居ないから、火傷はさせぬが、夢中で取られまいと振動かす、小児は手を出す、飛車を遁げる。
 よだれを垂々と垂らしながら、占た! とばかりで矢庭に対手の玉将を引掴むと、大きな口をへの字形に結んで見て居た赭らで、背高の、胸の大きい禅門が、鉄梃のやうな親指で、いきなり勝つた方の鼻つ頭をぐいと掴んで、豪いぞ、と引伸ばしたと思し召せ、はゝゝはゝ。」

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