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 『義血侠血』 青空文庫

 かくて翌日まさに福井に向かいて発足すべき三日目の夜の興行を〓《お》わりたりしは、一時に垂《なんな》んとするころなりき。昼《ひるま》を欺くばかりなりし公園内の万燈《まんどう》は全く消えて、雨催《あまもよい》の天《そら》に月はあれども、四面〓〓《おうぼつ》として煙《けぶり》の布《し》くがごとく、淡墨《うすずみ》を流せる森のかなたに、たちまち跫音の響きて、がやがやと罵る声せるは、見世物師らが打ち連れ立ちて公園を引き払うにぞありける。この一群れの迹《あと》に残りて語合《かたら》う女あり。

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