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 『義血侠血』 青空文庫

 程経て白糸は目覚ましぬ。この空小屋のうちに仮寝《うたたね》せし渠の懐には、欣弥が半年の学資を蔵《おさ》めたるなり。されども渠は危うかりしとも思わず、昼の暑さに引き替えて、涼しき真夜中の幽静《しずか》なるを喜びつつ、福井の金主が待てる旅宿に赴かんとて、これまで来たりけるに、ばらばらと小蔭より躍り出ずる人数《にんず》あり。
 みなこれ屈竟の大男《おおおのこ》、いずれも手拭いに面を覆《つつ》みたるが五人ばかり、手に手に研ぎ澄ましたる出刃庖丁を提《ひさ》げて、糸を追っ取り巻きぬ。

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