検索結果詳細
『人魚の祠』 青空文庫
差渡《さしわた》し、池の最も広い、向うの汀に、こんもりと一本の柳が茂つて、其の緑の色を際立てて、背後《うしろ》に一叢《ひとむら》の森がある、中へ横雲を白くたなびかせて、もう一叢《ひとむら》、一段高く森が見える。うしろは、遠里の淡い靄を曳いた、なだらかな山なんです。――柳の奥に、葉を掛けて、小さな葭簀張《よしずばり》の茶店が見えて、横が街道、すぐに水田《みづた》で、水田のへりの流《ながれ》にも、はら/\燕子花《かきつばた》が咲いて居ます。此の方は、薄碧い、眉毛のやうな遠山でした。
50/122
51/122
52/122
[Index]