検索結果詳細
『夜行巡査』 青空文庫
おりからひとしきり荒ぶ風は冷を極めて、手足も露わなる婦人《おんな》の膚を裂きて寸断せんとせり。渠はぶるぶると身を震わせ、鞠のごとくに竦みつつ、
「たまりません、もし旦那、どうぞ、後生でございます。しぱらくここにお置きあそばしてくださいまし。この寒さにお堀端の吹き曝しへ出ましては、こ、この子がかわいそうでございます。いろいろ災難に逢いまして、にわかの物貰いで勝手は分りませず……」といいかけて婦人は咽びぬ。
50/164
51/164
52/164
[Index]