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『夜行巡査』 青空文庫
「たまりません、もし旦那、どうぞ、後生でございます。しぱらくここにお置きあそばしてくださいまし。この寒さにお堀端の吹き曝しへ出ましては、こ、この子がかわいそうでございます。いろいろ災難に逢いまして、にわかの物貰いで勝手は分りませず……」といいかけて婦人は咽びぬ。
これをこの軒の主人《あるじ》に請わば、その諾否いまだ計りがたし。しかるに巡査は肯き入れざりき。
「いかん、おれがいったんいかんといったらなんといってもいかんのだ。たといきさまが、観音様の化身でも、寝ちゃならない、こら、行けというに」
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