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 『春昼後刻』 泉鏡花を読む

 錦の帯を解いた様な、媚めかしい草の上、雨のあとの薄霞、山の裾に靉靆く中に一張の紫大きさ月輪の如く、はた菫の花束に似たるあり。紫羅傘と書いていちはちの花、字の通りだと、それ美人の持物。
 散策子は一目見て、早く既に其の霞の端の、ひた/\と来て膚に絡ふのを覚えた。
 彼処と此方と、言ひ知らぬ、春の景色の繋がる中へ、蕨のやうな親仁の手、無骨な指で指して、

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