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『義血侠血』
青空文庫
この証拠物件を獲たるがために、渠はその
死
を思い遏《とどま》りて、いちはやく警察署に赴かんと、心変わればいまさら忌まわしきこの汀を離れて、渠は推し仆されたりしあたりを過ぎぬ。無念の情は勃然として起これり。繊弱《かよわ》き女子《おんな》の身なりしことの口惜しさ! 男子《おとこ》にてあらましかばなど、言い効《がい》もなき意気地なさを憶い出でて、しばしはその恨めしき地を去るに忍びざりき。
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