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 『義血侠血』 青空文庫

 こはこれ、公園地内に六勝亭と呼べる席貸《せきが》しにて、主翁《あるじ》は富裕の隠居なれば、けっこう数寄を尽くして、営業のかたわらその老いを楽しむところなり。
 糸が佇みたるは、その裏口の枝折《しおり》門の前なるが、いかにして忘れたりけむ、戸を鎖《さ》さでありければ、渠が靠《もた》るるとともに戸はおのずから内に啓きて、吸い込むがごとく糸を庭の内にぞ引き入れたる。

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