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『義血侠血』
青空文庫
渠はしばらく惘然《ぼうぜん》として佇みぬ。その心には何を思うともなく、きょろきょろとあたりを〓《みまわ》せり。幽寂に造られたる平庭を前に、縁の雨戸は長く続きて、家内は全く寝鎮《ねしず》まりたる気勢《けはい》なり。
白
糸は一歩を進め、二歩を進めて、いつしか「寂然の森《しげり》」を出でて、「井戸囲い」のほとりに抵《いた》りぬ。
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